これからの人事評価制度

弊害の多い「成果主義」

成果主義や業績主義などと呼ばれている考え方に基づく人事評価の方法(成果や業績を上げた人を評価するということ)には、次のようなさまざまな危険が潜んでいます。

・「社員は個人主義になる」 

→ 成果を上げた個人を評価しますので、成果以外の会社にとってよいこと、部下の教育や職場内を協力的な雰囲気にすることなどはおろそかになります。その従業員にとっては、如何に、他の従業員を成果で引き離し、相対的に有利に評価されるかが重要になってきます。自分が評価されることで、他の従業員が相対的に評価が下がることに対してのみ、集中することになります。

・「短期の成果しか考えなくなる」

 → 評価対象期間は賞与評価であれば半年、昇給であれば1年で、長期的なスパンで成果を見ることがなくなります。1年超えて成果を出すような業務はやらなくなります。

・「目標を低く設定して達成度を高くしようとする」 

→ 目標を達成するために、目標を低く設定するようになります。従業員のレベルは下がり、会社のレベルも下がります。

・「人材が育たない」 

→ 成果を上げるためには、従業員のレベルを上げる必要がありますが、従業員の教育に力を入れても評価されません。

 成果主義そのものが悪であるかの印象を受けますが、原理的に考えて、成果に基づいて評価し、処遇することには異論はないはずです。企業が生き残り、発展するためには成果を出さなければならないのですから。

 しかしながら、現在、成果主義として導入、運用されている方法は、「個人責任主義」に傾き過ぎていることから、さまざまな「ひずみ」が出ています。この個人責任主義を従業員個人にまで、能力的準備がない人や精神的準備のない人に適用してしまうの得策ではないようです。寧ろ、全体責任主義とすべきと思われます。

やめない社員研究所  原川 修一